秋と言ったら 落葉焚き?

         〜789女子高生シリーズより
                ( お侍 拍手お礼の六十七 )
 


秋が深まるにつけ、
陽射しの色合いもどんどんと蜜のような濃さを帯び、
それを塗られたせいだろか、
いつもと同んなじなはずの風景が、
風の中、どこか人恋しさを誘う色合いになる……。



不意なこととて、
いきなりの夏日に襲われたもした都下であったものの。
それはあくまでもイレギュラー。
少しずつ進みつつある季節の移り変わりが、
今更 止まったり逆行したりはしないようで。

 「……あ、」
 「久蔵殿vv」

ちょっと見、小じゃれたブティックや、
完全予約制の欧風旅亭
( オーベルジュ) かしらと思わすような。
可憐なマロニエやアイビーのからむ鉄柵の向こう、
手入れの行き届いた庭とそれから、
白亜の洋館風という外観が何ともロマンティックなお屋敷の、
玄関までのアプローチロードが連なる前庭を。
前になったり後になったり、
まるで蝶々たちが、時折 絡まり合うようにヒラヒラと舞う姿、
秋の陽の中へと彷彿とさせるよに。
軽やかな髪色の愛らしい娘さんたちが、
表と内から駆け寄り合っての合流し、
そのまま屋敷へ向かって歩き出したところ。
どちら様も普段着なのか さほど気張ってはないながら、
それでも若々しい秋の装いがすっきりとお似合い。
飾りっけといえば、
スムースなニット生地のプルオーバーの前合わせを、
少しほどハイウエストな位置でまとめている、
ボタン代わりの大きなメダリオン風ブローチ一つだけ。
だが、そこを中心にギャザーを寄せ集めているのが、
シンプルなのに高貴な印象さえ漂わせているまとまりのよさよ。
七分丈の濃色クロップパンツに
そんなニットを合わせていたのが当家の令嬢ならば。
フォークロア調のオーバーブラウスを、ボレロのように肩へ掛け、
細い細いシャーリングフリルがさりげなく巡る腰回りのところで
切り替えになっているセミタイトスカートが清楚で愛らしく。
童顔なのをきっちりと意識したスタイルの ひなげしさんが、
お土産ですよと、
お店で一番人気の
タピオカと米粉の鯛焼きを詰めた化粧箱を差し出し。
こちらはシックなカーキ色のウエストカットのジャケットの下、
ボートネックのインナーシャツが
その襟元へきれいな鎖骨をちらりと覗かせつつも、

 「…あら。」

何に気づいたか、
生なりのサブリナパンツに包まれた長い脚を
形よく折っての屈み込むと、
傍らのドウダンツツジの茂みをじっと見やるのが白百合さん。
ほどなくして、乾いた柴をかさこそ踏みつけるような音がし、
赤く色づいた生け垣の根元から、ひょこりと姿を見せたのが、

 「ありゃま☆」
 「くう。」

ペルシャ猫にも似た豊かな毛並みをした、
だが お顔は鼻ぺちゃではなくの精悍な、
キャラメル色のメインクーン。
家人らが可愛がりすぎたか、
いい恰幅をした体躯に育っているが、まだ一歳という子供猫で。
きちんと手入れをされてもいように、

 「〜〜〜〜〜。」

遊んで遊んでと庭のどこかから飛んで来たものか、
大好きなご主人様の久蔵へ駆け寄った姿はなかなかに圧巻。
その長毛のあちこちへ、
枯れ葉のくずを目一杯まみれさせておいでであり。
あんまりめかし込むことへのこだわりはない方の久蔵でさえ、
微妙に目許を眇めてしまったくらいで。
とはいえ、愛しい家族には違いないか、抱き上げる手に迷いはない。
ニットの上着に枯れ葉が移るのも厭わぬまま、
ひょいと胸元へ抱えると、

 「落ち葉が好きでな。」

紅バラさんが、彼女を庇うように ぼそりと呟いたのへは、
平八も七郎次もまた、
目許をたわませ何とも微笑ましげに笑って見せており。

 「腕白さんなんですね。」
 「ウチのイオも窓に寄っては、
  かさこそ躍る葉を興味津々で見ておりますよ。」

久蔵が届く範囲だけでもと枯れ葉を取り除くのへ、
左右からも手伝う手が伸び、
ふさふかな毛並みは あっと言う間にきれいになって。
ああでも落ち葉かきはしなくちゃななんて思ったものか、
庭の全景、遠い眸をして見やったお嬢様だったのへ。
ちょっと向こうを通りすがっていたり、
たまたま屋敷の近くに居合わせた格好の、
庭師全員が背条を延ばしたのは言うまでもなく。
だがだが、

 「落ち葉と言ったら、付き物なのが焚き火でしたがね。」
 「そうそう、お芋を焼いたりしてvv」

  今はダメなんですよね、惜しいなぁ。

  ダイオキシンでしたっけ?
  ガンを誘発する物質がばらまかれるからとか。

  ? ………?

  ええ、昔っからやってたことですのに、
  今更って感もありますよね。

  塩化ビニールとか混ざってなくとも
  禁止とされて久しいですよね……なんて。


そんな内容の会話が交わされるのへは、
大おとなたちとて過去のこととして久しい風物詩を、
まだ十代半ばのお嬢様がた、
下手すりゃ体験もしてなかろうし、
よって“覚えて”いるはずもなかろうにと、

  「???」 × @

何でだろう? どこで体験なさったのだろう?と
不思議に思ってのこと、皆様で首を傾げてしまわれる。

 「あれ、炎の中に入れるんじゃないんですよね。」
 「??? (そうなの?)」
 「ええ、そうなんですよvv」
 「今時の人とか誤解するんですよね。
  火が収まった澳火の中に、新聞紙やホイルでくるんで突っ込んで、
  余熱と遠赤外線で焼くから美味しいんですのにねvv」

でもでも、その澳火がね、良くないガスも出すらしくって。
不完全燃焼あつかいってやつですね、なんて。
やっぱり知ってるはずのないこと、
あるあるネタとして口にするものだから。

 博学なお嬢様たちだよな、
 ああ、さすが名家の令嬢は違う…なんて思われてるってこと、
 はてさて御存知でおいでかどうか。

いい子いい子と大好きなお嬢様たちに撫でられて、
ふさふさのお尻尾をくりんくりんと踊らせ。
さあさ、お家に入りましょうとする皆さんと、
一緒に玄関までを運ばれるくうちゃんだったが、


  「……………あ"」
  「? どしました? 久蔵殿。」
  「おや、くうちゃんたら、首輪に何をくっつけておりますか。」


  そんな会話が始まった日にゃあ。


  「待て待て待て待て待て〜〜〜〜〜っ!」
  「早まるでないぞ、3人共!」
  「いい子だから、その猫はこちらへ渡しなさい。」


無邪気なだけじゃあない目端も利くお嬢様たちに、
いつから何処にいたものか、
各々の保護者の皆様方が、
必死で“まった!”を掛けること請け合いじゃあなかろかと。
思うお人は、さぁさ米を賭けた賭けたvv
(おいおい)

  〜Fine〜 11.10.17.


  *確かに晩餐をご一緒にというお誘いはしましたが。
   そして その中で、各々が頑張って作った秋御膳の一品ずつ、
   ご披露しますねとも言ってはあったので。
   間に合うようにと頑張って
   時間を取られたんだろなという想像もおっつきますが……。
   そんでもいきなり飛び出して来たらば、
   気持ちは判るけれど、
   まあ落ち着いてと言いたくなっちゃいますよねぇ。
(苦笑)

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